本日AbletonがLive 12を発表しました。本日からパブリックベータテストも始まり、正式版のリリースは2024年初旬を予定しています。
本日からLive 12のリリースまでLive 11が20%オフで販売され、12のリリース時に無償アップデートできます。アップグレードも20%オフで提供されます。

また、いち早くLive 12に触れたい人のためにパブリックベータテストも開始されました(Live 11のライセンスが必要)。Live 11の時と同様、centercodeというサービス (こちらにもアカウント登録が必要)からベータ版のダウンロードが可能です。
最初に12の話を聞いた時は意外と早いなと思ったものの、Live 11登場のアナウンスからちょうど3年。年をとると時が経つのが早くなるものです。。。

http://ableton.centercode.com

それではさっそくLive 12で何が新しくなったのか、Ableton認定トレーナーのKOYASがほぼ最速レビューします。お約束ですが、まだ開発途中のベータ版ですので細部の機能や名称は変更になる可能性があります。ローカライズも終わっていないので新機能の部分は英語表示のままです。

Live 12ではUI表示スタイルを変更可能

Ableton Liveは基本的にUIに大きな変更を加えませんが、今回は22年を数えるLiveの歴史の中でも大きな変化。UIの表示が変更され、カスタマイズがより柔軟になりました。
クリップビューとデバイスビューを並べて表示できるようになり、ピアノロールとインストゥルメント/エフェクトなどを同時に表示できます。また、アレンジメントビューにミキサーを表示させることもできます。これを待ち望んでいた方も多いのではないでしょうか。

新しくなったブラウザーはフィルタリングやタグ付けに対応

Liveのブラウザーはバージョンアップの度に少しずつ手が加えられているのですが、いずれも小幅な変更。個人的には、大量に増えたLiveの内蔵音源やPackに対してブラウザーの機能が追いついてない印象でした。この感じはLive 11でブラウザーのカテゴリから[ドラム]を選ぶとわかると思います。

このブラウザーが大幅に改良されて、タグ付けと、タグを元にしたフィルタリングに対応しました。自分でタグを作成することも可能です。
このおかげで、今のLiveの内蔵コンテンツでもプリセットを選ぶ作業が格段に楽になりました。いままではMPE対応プリセットを探すのも一苦労でしたが、これもタグ付いたので簡単になります。
また、選んだサンプルやプリセットに類似する項目をライブラリー内から検索する機能もあります。この類似性検索は単にタグなどから類推するのではなく、XLN Audio XOみたいな機能が内部で解析しているそうです。
さらにmacOSのスマートフォルダみたいな感じで検索条件も保存できるようになり、便利なブラウザーに進化しました。

個人的には分かりづらかったオーディオエフェクトのフォルダ分け

ちなみにLive 11のブラウザーだけ、オーディオエフェクトがフォルダ分けされていましたが、12では潔く廃止されました。このフォルダーの分け方をカスタマイズできなかったので、centercodeのフォーラムもちょっと荒れ気味でした。

新デバイス:シンセのMeldとエフェクトのRoar

Meld

皆さんお待ちかねの新デバイスです。マクロシンセサイザーのMeldと、マルチバンド・サチュレーターのRoarがSuite専用で搭載されました。
Meldがどういうシンセサイザーなのか説明するのは難しいのですが、ハードウェアでいうなら、昨今人気のアナログとデジタルのハイブリッド型シンセサイザーみたいな感じです。
Meldの2基あるオシレーターには、それぞれマクロという音を変えるツマミが2つあり、そのツマミ等にモジュレーションかけてサウンドを変化させるシンセサイザー。
モジュレーション機能がものすごく充実していて、モジュレーションの割り当てを表示するモジュレーションマトリクスが大きすぎるくらいです。笑

Roar

Roarは多機能なマルチバンドサチュレーター。2Mix全体にかけてサウンドの調整にも使えるし、サウンドを思いっきり加工することもできます。こちらもモジュレーションが充実していて、ショートディレイやグリッチ系エフェクトをかけたようなサウンドにも変化させられます。
少し使って見た感じだとElektronのAnalog Heatを発展させたようなデバイスと思いました。

この他にもPackが追加され、MPEに対応したRobert Henke師の人気グラニュラーシンセのGranulator IIIや、アレンジメントビューでもライブできるようになるPerformance Packなど、気になるツールが搭載されています。

MIDI編集も機能強化:MIDI変形&生成ツール

Abletonユーザーの方と話していると、「もう少し打ち込みの機能が充実してほしいね〜」という意見を聞くのですが、そこにも手が入りました。
Live 12では、楽曲全体のキーとスケールを指定できるソングスケールが搭載されました。ここで設定したキーとスケールをLive全体が認識するので、MIDIデータの編集だけでなくArpeggiatorなどのMIDIエフェクトも設定したキーとスケールから外れないように使うことができます。

このソングスケール機能を活かしたMIDI関連の新機能として、すでに打ち込まれたMIDIデータを加工する「MIDI変形ツール」と、何もない状態からMIDIデータを生成する「MIDI生成ツール」が搭載されました。

MIDI変形ツールは、白玉のコードをアルペジオにしたり、発音するタイミングを少しずらすストラム奏法など数種類のプリセットが内蔵されています。いままでマウスでポチポチやっていた作業が一発でできるようになって便利。わかりづらかったクオンタイズの設定もここに移動して使いやすくなりました。

MIDI生成ツールにも数種類の機能が搭載されています。4つまでのコード進行を生成できるStackは、ソングケール機能で設定したキーとスケールを元に、適当に図形を動かすだけでコード進行が生まれます。また、リズムパターンを生成するRhythmなども搭載されているほか、Max for Liveデバイスの形でユークリッドを使用したシーケンサーも搭載されています。

マイクロチューニングにも対応した「チューニングシステム」

Live 12ではマイクロチューニング(微分音)などチューニングのカスタマイズにも対応しました。私たちがよく耳にする音楽の多くは1オクターブを均等に12音に分けた平均律ですが、これをDAWレベルで他のチューニングに変えてしまう機能。AbletonがリリースしたMicrotunerというPackがLiveに統合されたような感じです。

このチューニングシステムは、SCALA形式のファイルに対応していて、ネット上ではさまざまなチューニングが共有されています。

アクセシビリティに対応

Live 12では、視覚障害者などでも使いやすいようにmacOS/WindowsともにOSのアクセシビリティ機能に対応。スクリーンリーダーや点字キーボードと組み合わせて使えます。
それにあわせて、セッションビューとアレンジメントビューの切り替えに使っていたTabキーをフォーカスしている項目の移動に使えるようになり、マウス無しで操作できる部分が増えました。

Live 12はかゆいところを越えてさらに先まで手が届く進化

こうして駆け足で紹介してきましたが、今回のバージョンアップはここでは紹介しきれないくらいボリュームがあります。全体的な印象としては、古い設計のまま手つかずになっていた機能を今風にアップデートしたことと、長年のユーザーが「この機能を搭載してほしいけどAbletonは頑なだからな〜」と半ばあきらめていた機能が搭載された印象です。
Liveはバージョン9あたりから「初心者にも優しくて使いやすい」路線でしたが、12はそれを保ちながらも長年Liveを使っているうるさ方も満足いくような仕上がりだと個人的には思います。かゆいところに手が届くどころか、さらに先まで手が届いているアップデートだと感じました。

Ableton Meetup TokyoでもLive 12を取りあげます

いままで同様、Ableton Meetup Tokyoでもこの新しいLiveを取りあげます。Live 12を特集した配信は12月5日に予定しています。
この配信に関する最新情報は、Ableton Meetup TokyoのwebサイトやYouTubeチャンネルをチェックしてください!

文責:KOYAS(Ableton認定トレーナー)

「AbletonがLive 12を発表!パブリックベータテストも開始したのでほぼ最速ベータ版レビュー」に1件のコメントがあります

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