ライブ配信機材のシステム構築術、第1回目ではちゃんとプランニングをしようという話を書きましたが、今回は機材編まずはカメラとビデオスイッチャーです。
第1回目の記事はこちら
この画像はAMTのプランニングしたシステムを図にまとめたもの。Ableton Meetup Tokyoのイベントは機材が多く、登壇者も入れ替わるので、毎回こんな感じにKeynoteでシステム図を作っています。
このプランニングをざっくりまとめると↓
- PCの画面(1-2台)とカメラ(1-2台)の映像を切り替えたい
- 音響周り:マイクとPC (Ableton LiveとZOOM) の音声をミキシングしたい
- 鑑賞に堪えうる程度のまともな映像にしたい
- (コロナが落ち着いたら)外の現場でも配信できるようにしたいので、機材を減らして運搬の手間を省きたい
ビデオスイッチャーでPCの画面とカメラ(2台)の映像を切り替える
まず必要になるのは、カメラと映像を切り替えるビデオスイッチャー。音楽でいえば卓みたいなもので、これが配信システムの中心になります。
少し前まではビデオスイッチャーはエントリーモデルでも10万円を超えるお高い機材だったので、初期のAMTでは数千円のHDMI切替機を使っていました。しかし、切り替え時に何秒か映像が途切れるので実用にはなりません。
そこで、去年Black Magic Designから4万円を切る安価なATEM miniが発売されました。しかし、コロナの影響か品薄…予約して入荷を待っているうちに、さらに機能強化したATEM mini Proが発売されました。
馴染みの楽器屋があると、そんな時でも「やっぱATEM mini Proがいい!」と連絡すれば対応してくれるのがいいですね。
僕はProを買いましたが、個人的に重視した無印とProの機能の違いは
・本体からLAN端子から直接YouTubeやFacebookに配信できる
・本体のUSB-C端子にSSDとかを繋げて録画できる
・本体のHDMIアウトからマルチビューのプレビューが出来る
この機能差でお値段が倍くらい違うので、上に書いてあることがちんぷんかんぷんだったら無印でも十分だと思います。
また、今回導入するビデオスイッチャーの候補にROLAND VR-1HDもあがっていました。こちらはオールインワン型のスイッチャーで、オーディオ/ビデオ共に3chまでも扱えます。
お値段はちょっと高くなりますが、操作性はATEM miniより断然良いし、小規模な配信ならこの1台で全てまかなえて、ナイスな一台だ思います。
沼に要注意!のカメラ
ビデオスイッチャーの次はカメラです。Ableton Meetup Tokyoでは、登壇者の姿や全景を写すメインカメラと、機材を操作する時に手元を映すカメラの2台が必要になります。
メインカメラの画質=配信の画質のクオリティーに直結するので、ある程度高性能なものがよいです。
いまはデジタル一眼レフを動画配信にも使えるので、既に持っている人はまずそれを使いましょう。デジタル一眼レフの世界は沼らしいので、気軽に配信したい方は要注意です。
レンズは音響機器でいうとプリアンプみたいなもので、シビアに画質を求めると用途に応じてレンズを変えたりと、危険な香りがしますよね。笑
僕は家にSONYのコンデジ DSC-RX100M4があったので、それを使いました。暗い場所にも強く、画はそれなりに綺麗なので、今のところ自分の用途にはこれで十分な気もします。
ただ、ピントを合わせる速度はもっさり。SONY製のカメラはどれもそんな傾向を感じます。
で、オススメは?と聞かれると僕も正直よくわからないのが申し訳ないところです。本体だけで20万円クラスのデジタル一眼レフは高画質ですが、レンズも必要だし、運搬には気を遣うしで、手軽に手は出せません。
Rock oNのスタッフの方からはPanasonic LUMIX DMC-GH4を中古で買うのが良いんじゃない?というアドバイスを頂きました。
個人的にはタッチパネルでピントを合わせられる機種が便利だと思います。お値段はちょっと上がりますが、スマホで慣れている操作だし、簡単にピント合わせられるのは大きなメリットです。
以上を考慮に入れると、10万円前後の価格帯のカメラならそれなりに高画質になるのではないでしょうか。
また、クラブやライブハウスなど暗い場所の映像を配信する人には、一つ気をつけてもらいたい点があります。それはレンズのF値。これは絞りのことで、ざっくりいうと値が小さければ小さいほど暗い場所に強くなるそうです。
前述のDSC-RX100M4はF値1.8で、実際使って見ると確かに暗い場所にも強いです。
また、絞り以外のスペックにも左右される部分はあるでしょう。下の画像は5/30に開催したAbleton Meetup Tokyoウェビナーのもの。
左がSony α7(レンズは不明)、右がGoPro Hero 7です。Zoomでレコーディングした圧縮のかかった画像からのキャプチャーですが、差は歴然としています。
映像のエキスパートなら上手い具合に補正できるのかも知れませんが、僕にはそんなスキルありません。
暗い場所でライブ配信するなら、まず暗所に強いカメラを使い、GoProはやめておくか照明をあてましょう。
機材を触る映像を流すなら手元カメラは必須
機材触るところ見せるなら、カメラで手元を写しましょう。これがあるのとないのでは、視聴者にとっては大違いです。
画質はスマホ程度で十分ですが、電話が使えなくなったり、配信している映像に通知が出てくるのは困ります。
そこでよく使われているのはGoProです。本体も小さく、お値段も1台4万円前後でお手頃、画質もそこそこ、アクセサリー類も豊富で色々な所にカメラをマウント出来るし、明るい場所ならメインカメラとしても使えます。
ただし、配信で使う場合は本体でHDMI出力ができる機種が必要です。僕はGoPro HERO8 Blackが欲しかったのですが、 HDMI出力には別売のメディア モジュラーが必要。この時はコロナの影響でこのメディア モジュラーが入手困難だったので、一つ前のGoPro HERO7 Blackにしました。
ただ、個人的な経験では、GoProは安定性が悪く、いつの間にか電源が落ちていたり、バッテリーが異様に早く消耗したりします。
また、7,8ともにズーム機能を備えていますが、スマホの方がマシなレベル。GoProはアクセサリー類を駆使して、ベストポジションにカメラを無理矢理マウントするのがコンセプトらしいです。
子持ちにもお勧めハンディカム
そこで役に立つのがハンディカムです。本体は大きいですが、機能的にはオールインワンで扱いやすいです。画質はそこそこで暗所にも強くないですが、配信で手元を写すくらいなら十分。今のところは高価な4K対応モデルは必要ないでしょう。
そこで選んだのはPanasonic HC-V480MS。このモデルだと90倍ズームできるので、運動会や発表会で子どもの姿を撮影するのにぴったり。それどころか遠く離れたビルの室内も見えたりします。いいのかな…
あると便利な小型モニター
複数台の映像を切り替える場合、小型のモニターディスプレイがあると便利です。カメラの映像をチェックするのに、いちいちカメラを覗きに行くのは面倒だし、モニターも小さいです。
そこでスイッチャーからこうしたモニターに映像を映して使います。ここでATEM mini Proのマルチビュー機能が役立ちます。
スペックとしては11.6インチくらいのサイズで、フルHD(1920*1080)だせるIPSパネルのモニターが良いでしょう。Amazonにある中華製の激安品で多分十分です。お値段は時価みたいなものですが、大体1万円程度です。
映像トラブルは解決が大変
結局AMTではATEM mini Proをスイッチャーにして、カメラは家にあるSONY DSC-RM100M4を使うことにしました。
Home Edition Vol.1を配信した最終的なセットアップ図はこちらです。配信PCなくてもできたけど、一応使いました。
さて、注文していたATEM mini Proが届いてセットアップしてみると、GoProの映像が1秒くらい遅延しています。数msのレーテンシーならDAWで慣れていますが、この遅れは使い物になりません。
こちらはカメラの設定を2日くらい試行錯誤してみました。結局はGoProの安定化機能(手ぶれ補正)がオンになっているのが原因で、オフにしたら遅延はなくなりました。やはり自前でシステム持ってないと、カメラの設定のような細かい所には目が行き届かないものですね。。
ビデオスイッチャーとカメラの話だけでこんなに記事が長くなってしまいました。ちゃんと配信しようと思うと様々な機材が必要になり、自分が映像トラブルになれていないせいか、トラブルシューティングも大変です。音響機材やコンピューターのトラブルなら慣れていますが…笑
という訳で次稿ではマイクや音響三脚など撮影アクセサリーについての話を書いていきたいと思います。