以前、Ableton Meetup Tokyoのライブ配信でマイクの音量バランスが悪いとYouTubeのコメントでご指摘を頂き、アーカイブを見たら本当にその通りでした。ご指摘くれた方ありがとうございます。
これは事前のサウンドチェック不足もさることながら、マイクや他の要因(相手がZoomだったり)でそうなることもあります。特にスピーチ用マイクの情報は少なく、そのマイク選びは難しいことを痛感しました。

Ableton認定トレーナーとしては、機材を触りながら喋ることが多いので、マイクも重要なギアです。人前でプレゼンテーションするときにハンドマイクしかないと片手が塞がってやりづらいので、僕は喋りながら両手が使えるヘッドセットマイクを持ち込んでいます。また、普段のAbleton Meetup Tokyoでも登壇者はヘッドセットマイクを使ってもらうことが多いです。
この稿では色々マイクを試してみた試行錯誤の道のりを記していきたいと思います。

機材を触りながら喋るときに使うマイクのポイント

  • 両手が使えるもの
  • 長時間の配信やイベントに対応できる装着感の良いもの(きつくないもの)
  • 複数の人が使い回すことも考慮してセッティングが楽なもの
  • ノイズが少なく、ハウリングに強いもの
  • そこそこの音質
  • 有線で普通のミキサーに繋げられるもの

マイクにも色々種類がありますが、上記を考慮に入れると、まずマイクスタンドが必要なハンドマイクの類いは候補からはずれます。
先に結論を書いてしまうと、理想は定番であるDPAのヘッドセットマイクです。以前大きな現場で使いましたが、マイク部分が軽量で装着している感覚すらなく、上の条件はすべて満たしていて本当によかったです。しかし、1本10万円近くするので、使用頻度など色々考えるとなかなか出せる金額ではありません。。。
では零細フリーランスに向いたマイクはどんなものでしょうか?この稿でも明確な結論は出ていませんが、求める仕様は見えてきた気がします。

マイク選びのポイント1:指向性

指向性とはマイクが集音できる範囲のことで、詳しい解説はShureのサイトに載っています。指向性はマイクの用途によって異なるので、マイク選びの上で重要です。
単一指向性(Cardioid/カーディオイド)のマイクは、ある一定方向からの音を拾うように設計されていて、そこを外れるとマイクがあまり声を拾ってくれません。しかし、騒がしいステージ上でも外来ノイズを拾いにくく、ハウリングも起こにくいです。スピーチよりもボーカル向けだと思います。

いっぽう、無指向性(Omnidirectional)のマイクはどの方向からの音も拾うので、適当なセッティングでも声を拾います。ただし、同時にスピーカーからの外音や外来ノイズも拾いやすくなります。静かな会場でトークセッションする用途には向いているでしょう。

マイク選びのポイント2:マイクの種類

マイクの種類はいくつかありますが、代表的なものはダイナミックマイクとコンデンサーマイクの2種類です。詳しい違いはサウンドハウスのサイトでも解説されていますが、ダイナミックマイクはファンタム電源が不要/出力ゲインは低め/雑に扱っても大丈夫で、コンデンサーマイクはファンタム電源が必要/出力ゲインは高め/レコーディングスタジオでも使われています。ヘッドセットマイクは小型のものが多いので、コンデンサーマイクが主流です。

マイク選びのポイント3:装着方法

これはマイクを装着する方法です。装着感に直結する部分なので、長時間使う方にはもっとも重要なポイントかもしれません。
ヘッドセットマイクだと耳にかけるタイプが多く、片耳用と両耳用の2種類あります。片耳用はイヤーフックともいい、両耳用はデュアルイヤーとかヘッドウォーン(head-worn)ともいいます。
また、ピンマイクと呼ばれるラベリアマイクもあります。こちらは着けている感じがしないのはいいですが、襟付きシャツを着ていないとマイクが変な方向を向いたり、洋服と擦れる音を拾ってしまいます。襟付きシャツを着ることが少ない業界なのでちょっと不向きです。笑
その他に、電話応対のオペレーターが使うようなヘッドフォンみたいに頭の上に載せるオーバーヘッドタイプもあります。

また、頭に装着するものなので、重量も気になるところ。メーカーの仕様をみても、多くはケーブルやコネクタ込みの重量が載っているので、今回はそれ以外の頭に載る部分だけの重さを量りました。量り方が適当に見えるかもしれませんが、一応ちゃんと量っています。

悪者扱い?SHURE WH20シリーズ

メーカーの方には申し訳ないですが、またSHURE WH20XLRを引き合いに出してしまいました。とはいえ、長年使っているので、ここをスタート地点に見ていきましょう。
まずはこのマイクの仕様。WH20XLRはファンタム電源を必要としないダイナミックマイクで、取扱説明書によると指向性は単一指向性です。ダイナミックマイクなので、ファンタム電源は不要で、取扱が楽なのはいいところです。

しかし、それだけに出力レベルが小さく、指向性があるマイクにもかかわらず、ミキサー部でゲインを稼ぐとハウリングしやすい印象があります。実際現場で使ってみると、声が小さめな女性の方には、ミキサーでゲインを目一杯上げても音量足りなかったりします。

また、マイキングもシビアで、唇の端にくっつくようなセッティングが推奨されています。これにより近接効果で低域が持ち上がり、ちょうどいい感じの音質になります。
ところがマイクが口から離れると、レゾナンスきつめにハイパスフィルターかけたような感じで低域がバッサリ落ちます。スピーチは低域出過ぎていると声が聞き取りづらくなるので、設計思想はわかるのですが、このマイクはちょっとバッサリ切りすぎる印象があります。

さて、装着感ですが、ネットでは「孫悟空」と呼ばれるほど締め付けがきついです。バンドを手で曲げることで調節できますが、精密な調節はできません。その結果、マイクの位置が段々ずれてしまいます。

頭に載る部分の重量をざっくり測ると約48.5g。自分にはちょっと重く感じました。実際に長時間装着すると耳や頭が痛くなります。


こうしてみると、ファンタム電源が必要になりますが、やっぱりコンデンサーマイクがよいのかなと思います。SHUREにもSM35というコンデンサー型のヘッドセットがありますが、売り文句をみるとパフォーマンス用のがっちり締めるタイプなので、やっぱり自分には不向きなようです。

ヘッドセットのマイキング

マイキングの話が出てきたところで、ヘッドセットのマイキングはどうしたらよいのでしょうか。多くのメーカーは下のようなマイキングを推奨しています。
・無指向性マイクは頬のあたりに装着
・単一指向性マイクは口元から2~3cm横

上の写真は、SHUREの単一指向性ヘッドセットマイクでのマイキング例です。写っているのは、一昨年AMTに出て頂いたDylan Woodで、さすがプレゼンテーション慣れしているのか、マイクの位置がバッチリです。ヘッドセットマイクはこれくらい近づけないといいマイキングにはなりません。それでもDylanはローが出てない音質が気に入らない様子でしたが…笑

こちらの写真は無指向性マイクのマイキング例。Ableton Loop 2018のときのScientistによるDUB講座の写真で、おそらくDPAのマイクだと思います。頬の横にマイクがあるのがわかるかと思います。

YouTubeでヘッドセットマイク選びしていると、日本人YouTuberの動画を見ることが多かったですが、口から10cm以上離した適当なセッティングで音質比較していたり、上下逆に着けている人もいました。映像に残るんだからちゃんと使いましょう。。。

コンデンサー型ラベリアマイク TOMOCA / EM-700

ラベリアマイクは、テレビに出ている人が首元に着けているアレです。その中でも最も安価なこのマイクを試してみました。メーカーはTOMOCA(秋葉原の有名な音響機器店)になっていますが、箱にはYOGAと書いてあり、TOMOCAは輸入代理店だと思われます。
マイクの指向性は無指向性なので、セッティングは適当でも結構拾ってくれます。最大の問題はサーっというノイズが盛大に乗るところ。自宅配信とかならまだいいかもしれませんが、大音量の出るイベントで使うのは厳しいノイズでした。なので即お蔵入り…

イヤーフックマイク JTS / CM801F

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/160618/

サウンドハウスで安く売られている、片耳にかけるイヤーフックタイプのコンデンサーマイク。耳にひっかけるというより耳にはめこむ感じで装着します。油断するとスタジオの中で行方不明になるくらいサイズも小さく、フレームも細く装着感は非常によかったです。
頭にかかる部分の重量をざっくり量ると約6g。着けていることを忘れるくらい軽いです。

マイクは無指向性で、セッティングも楽です。ただし、イベント現場で使用していないのでハウリングに強いかどうかはわかりません。
音質については、周波数特性はフラットで、音質も及第点上げられるくらいでした。しかし、問題はやはり大きめなノイズが出ているところです。それさえなければいいのに…
上位機種のCM-8015Fだとマシかもしれませんが、無駄な出費になると怖いので試していません。店頭展示もしてないし。

ヘッドセットマイク AKG / C520

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/99372/

C520は、サウンドハウスのヘッドセットマイクでベストセラーのコンデンサーマイクです。発売は2009年で、もう10年以上にわたる寿命の長い製品です。家の近くで安い中古見つけたので買ってみました。

C520は、メガネのような感じで耳に装着するタイプのヘッドセットマイクです。フレームは細いフレーム2本で構成されていて、マイクは調節可能なグースネックタイプ。バンドも調節可能なので、ベストポジションを狙えます。

指向性は単一指向型で、ノイズも少なく、音質は申し分ないくらいナチュラル。さすがにお値段上がるとしっかりした作りです。しかし、使った感じでは、単一指向型ということもありマイキングはややシビアです。メインの用途はボーカルを想定して作られたかもしれません。

頭にかかる部分の重量をざっくり量ると約30.6g。実際に使ってみると自分の許容範囲ギリギリの重さでした。
自分の好みでいうと、色は黒よりベージュの方がいいですが、いま手持ちのマイクでこれが一番良く、自分だけが使うならこのマイクが今のメインです。

まとめ

色々試してみましたが、マイキングと使いやすさはトレードオフの関係にあり、ここがマイク選びで一番悩むところかも知れません。指向性のあるマイクと無指向性のあるマイクどっちがいいかが一番悩んだポイントです。あとノイズの量も値段と反比例する印象だったので、大音量の出る現場で使う方はケチらず高いもの買った方が良いでしょう。
色々試してみて自分の使い方に向いてそうなマイクはこんな感じでした。

  • イヤーフック型が一番楽
  • コンデンサーマイクの方が使いやすい
  • フレーム細い方が装着感がいい
  • 頭に載る部分の重量は30g以下
  • 無指向性の方がセッティングが楽。けど現場のハウリング耐性は使ってみないとわからない。
  • 色は目立ちにくいベージュ

というわけで、次は上記の仕様を満たしているbeyerdynamic
TG H57か、COUNTRYMAN E6 EARSET狙ってみようと思います。ただ、代理店にも在庫がなく、納期は2-3ヶ月かかります。特殊な製品とはいえ、もうちょっと売る気出して欲しいところです。

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